京都を代表する老舗ブランド「よーじや」。その名を耳にすれば、多くの人がまず「あぶらとり紙」を思い浮かべるでしょう。しかし、よーじやは多岐にわたるスキンケア用品の販売や、趣のある飲食店も展開していることは、意外と知られていません。
現在、よーじやは「脱・観光依存」を掲げ、あぶらとり紙のイメージからの脱却を図っています。2025年3月26日には、「みんなが喜ぶ京都にする」というコーポレートスローガンを新たに掲げ、ブランドロゴの刷新を含むリブランディングを実施しました。
藤村さん
入社15年目。店舗、オンラインショップ、SNS関連業務など様々な部署を統括する役割。
疋田さん
店舗スタッフ、倉庫ロジスティクスを経て、既存店の運営と新規出店のサポートを担当。ECの運営やキャンペーン企画も行う。
藤村「ここ30年、あぶらとり紙と京都観光のお土産という観光ビジネスで安定していたのですが、一方では危機感もあったんです。それは、よーじやというブランドが地元京都の方々にとって、あまり好意的に捉えられていないんじゃないかということです。外国の方や観光客が増えて京都に住む人たちの日常が崩れていく、その一端をよーじやが担っているというイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないかと。観光業に依存している状況に、2019年に代表に就任した現代表は危機感を感じていました。
そのため、代表が代替わりした2019年頃より”観光業だけに依存しない経営”を掲げ、よーじやの商品、よーじやというブランド自体のファンを増やしていくことを目標に掲げました。しかし、その矢先に新型コロナウイルス感染症が拡大し、観光客が激減。売上が大きく落ち込む中で、改めて観光需要への依存度の高さを痛感することとなりました。当初から抱いていた危機感が確信に変わり、”観光業だけに依存しない経営”を掲げました。
100年前のあぶらとり紙の販売開始当時と同様に、地元京都に愛され、貢献できるブランドでありたい。京都に関わるすべての方々に喜んでいただきたい。原点に立ち返り、私たちに何ができるのかを真摯に考え、再び取り組んでいこうと決意しました。そのためには、まずお客様を知ることが不可欠だったのです。」
藤村「お客様に還元できる取り組み自体は以前にも挑戦したことはありました。店舗でお客様情報を記入するカルテを作ったり、紙媒体のポイントカードを配ったり。ただ、ポイントの付与が一部の商品しかなかったことや、お客様の大半が観光客の方々でしたのでその場限りになってしまい、なかなかリピーターにつながりませんでした。
また、アナログの紙媒体ですと詳細な顧客情報は取得できず、管理も難しかった。当時オンラインショップの売上は全体の1割ほどでしたので、日常的に店舗をご利用いただけるお客様がどういった方なのか、喜んでいただけるアプローチが何なのかほとんど何も分からない状況だったんです。
そこでオンラインショップをリニューアルする際に先を見据えて、店舗とオンラインショップのポイントが連動でき、相互送客可能な連携オプション機能を持つカートを選定しました。CROSS POINTアプリを通じて店舗とオンラインの顧客情報を集約し、日常的にご利用いただいているお客様にポイントやクーポンで還元する。そういった構想は以前からありましたが、コロナも落ち着き、社内体制や予算の面でも土台ができあがった2023年、ようやく稼働にこぎつけたという流れです。」
疋田「よーじやは全21店舗あり、この四条河原町店のようにイートインも楽しめるお店は2店舗ございます。CROSSPOINTを導入して約1年が経ち、ある程度顧客情報が集まって、どこにどういったお客様が来店されているのか傾向が見えてきました。商品毎や年齢毎、また店舗毎の違いなどを分析してプロモーションや目標に対する指標に活用しています。例えば観光客が少ない百貨店にて、ハンドクリームの売上が伸びているデータなどは、日常使いのお客様が増えつつあることを実感でき、励みになっています。」
ハンドクリームなど、肌へのやさしさを第一に、素材にこだわった化粧品・化粧雑貨も取り扱う
肌ケアブランド×カフェの融合型店舗「よーじや 四条河原町店」ではスイーツも楽しめる
疋田「北千住マルイに出店しているのですが、定期的に「マルコとマルオの10日間」というマルイ独自のイベントがあるんです。それに合わせて、よーじや北千住マルイ店だけポイントアップするなどの施策が打てるようになりました。今まで買ってくださったお客様もそのタイミングで再来店いただけることがデータで把握できているので、キャンペーンを打つことでよーじやのお客様への還元のみならず、少しでも商業施設を盛り上げることにも貢献できればなと。商業施設や店舗がある町のイベントのキャッチアップは欠かさないようにしています。」
藤村「他に2024年12月によーじやとして初めてお客様感謝祭を開催しました。特にご贔屓にしていただいている方、約20名ほどですが招待状をお送りさせていただいて、嵯峨野嵐山のよーじやカフェにて食事や新商品をお試しいただきました。京都の方のみならず、遠方からお越しいただいたコアなファンの方より直接お話を伺い、嬉しい気持ちが芽生えたり、新たな課題が見えたり、貴重な体験でした。そういったお客様や課題がリアルに可視化され、次のアプローチにも活かせるようになったことも非常に大きいです。
当時、新卒入社2年目の社員の発案で企画の中心になって感謝祭を進め、その子にとってもいい機会になりましたし、お客様も非常にご満足いただけたかなと思いますので、今後もこの活動は継続していきたいですね。」
藤村「コロナの情勢もあったのですが、店舗のお客様がオンラインショップに流れるという危惧は特にありませんでした。お店の売り上げも以前とは全く違う環境でしたので、全社的に『なんとかしないと』という危機感を持っていたというのは大きいです。また、代表が構想を発信し続けていたことも、導入に際して壁がなかった要因かもしれません。」
疋田「確かに、店舗はオペレーションの業務が増える側面もあります。店舗でお会計の際などにアプリを案内するとレジにお客様が並んでしまうので、『電波の問題で時間が掛かるかも』とか『後続のお客様にストレスを感じさせないよう早く済ませたい』など、私も以前レジに立っていたので気持ちがよく分かるんです。ただ、そのひと手間がお客様の満足にも、店舗の売上にも、ひいては観光依存の脱却にもつながるんだよと。単純に『オペレーションが変わりました、お願いします』とだけ伝えるのではなく、その先のイメージを共有できるよう意識しています。オペレーション時のトラブルや機能面での分からないことはとにかく、なんでもCROSS POINTのサポートの方に電話して、解決に向けて寄り添っていただけたので大変助かりました。」
藤村「観光地の店舗売上が圧倒的であったため、従来の商品開発やキャンペーンは、観光客を前提としていました。
2月にオープンしたよーじや四条河原町店は、これからのよーじやの新たな取り組みを象徴する、カフェとスキンケアブランドの融合店舗です。スキンケア用品の販売に加え、ランチやカフェ、ディナーも楽しめる街中の店舗として、観光客の方はもちろん、地元京都の方々の日常使いにも対応できるように目指しています。
観光ビジネスからの脱却と、日常的にご利用いただけるブランドへの転換は、まだ道半ばです。しかし、蓄積したデータを基に試行錯誤を重ね、京都に貢献し、愛されるブランドを目指していきたいと思っています。」
「京都を盛り上げたい」という思いから京都サンガF.C.のスポンサーになった
「京都サンガF.C.」や「京都ハンナリーズ」とのコラボ商品も販売されている