導入事例
原宿のANAP店舗。8月下旬までセールを開催中。
ウィメンズカジュアル衣料を手掛けるANAP(アナップ)がEC事業を中心に着実に業績が上向いている。それを陰で支えているのが、同社の在庫管理システムなどを提供する企業、アイルだ。
ANAPがアイルのシステムを初導入した2011年以降、両社は二人三脚で努力を重ね、EC化率は60%とファッション業界でもトップクラスの数値をマークした。果たして、ANAPとアイルはどのように成長してきたのか?両社の出会いから現在までの7年間をたどる。
<<WWDジャパン 2018年7月30日号 より抜粋>>
2011年 ANAPとアイルの出会い
アラジンオフィスの導入
ECで販売中のフォトTシャツ(2900円)とロゴサンダル(1900円)
安くてカワイイ服を武器にギャルブームで一世を風びした後、停滞時期もあったが17年8月期には黒字化に浮上、安定した収益基盤へと変わったANAP。
今でこそデジタル化戦略を進め、EC化率60%を誇る同社だが、自社ECサイト「ANAPオンラインストア」をスタートした当初はシステムがまだ整っていなかった。同社のEC事業を統括する責任者は「当時入れていた基幹業務システムでは、商品単品の色やサイズといったSKU管理ができていなかった。自社ECを始めた時も、スタッフが倉庫に行って商品を探し、ピッキングしている状態だった」と当時を振り返る。
しかしECの売り上げが伸びるにつれ、自社で管理しきれない状況に陥ってしまう。その状況を打破するために導入されたのが、アイルが提供するファッション企業向け販売・在庫管理システムの「アラジンオフィス(※1)」だ。
ANAPが当時抱えていた問題を熱心に聞き取り、課題解決のために一緒に考えてきた。その努力が実を結び、11年に同システムの採用が決定した。同システム導入後、ANAPは上場。アイルとタッグを組み、EC事業発展に向けて攻めの姿勢に転じていくことになる。
2013年~ 在庫―元化でさらなる利益拡大へ
在庫一元化
在庫一元化で在庫ロスが18億円から5億円へ
基幹システムを整え、SKU管理を行えるようになったANAPが次に行ったのが今まで別々だった店舗と自社ECの在庫の共有だ。
「当時は、ECと店舗、どちらにどの程度在庫を積むのかが課題だった。その解決策として、ネットとリアルの在庫を全て共有してしまおうと考えた。今まで余剰在庫だった商品も、必ずどこかで販売されているような状況ができた」と管理担当者。
この機会損失の減少により、自社ECサイトの利益は大幅に向上。EC化率は約25%から30%へと上昇した。
しかしEC化率30%を達成して以降、自社サイトの成長は鈍化。そこでANAPはさらなるECでの利益拡大を目指し、「ゾゾタウン」や「ショップリスト」といったECモールヘの出店を行う。これにより、売り上げは再び大幅アップ。以降、ECモールヘの出店をさらに加速させ、現在は計15ショップへ出店している。
「今後も新規モールは開拓する。実際に出店してみなければ、売れるかどうかは分からない。まずは出店して様子を見て、結果が出ないモールは精査していく」とこれからのモール開拓にも積極的だ。
2015年~ 多数モール出店の悩み
クロスモールの導入
モールに出店する場合、そのサイト用の在庫を確保しなければならず、外部サイトの売り上げ増に伴い、再び在庫の問題が浮上した。
「Aモールでは売り切れている商品がBモールではまだ在庫があるなど、在庫ロスが増えてきていた」と管理担当者。そこで導入したのがアイルの複数EC一元管理サービスの「クロスモール(※2)」だ。同システムにより、外部サイトで商品が売れた場合、その分だけ商品を配送できるようになった。
はじめは特定のモールとの連携しかできなかった「クロスモール」も、ANAPが出店する「ゾゾタウン」や「ショップリスト」などのモールにも順次対応していった。
「外部サイトヘ数多く出店するANAPがリーディングモデルとなり、共に『クロスモール』の連携先を開拓していった」と北川課長は語る。
悩み解消でブランドの強みをECにも生かす
「クロスモール」は、ANAPが自社で行っているささげ(撮影・採寸・原稿)のデータの外部サイトヘの共有も可能にした。
「ANAPはもともと商品の小ロット多品種展開が特徴。1シーズンで5000型以上のアイテムがある。当時はそれらのささげのデータを人的に他サイトに共有しており、全ての商品データをコピーすることができなかった。そのため外部サイトで販売する商品も限られていた」と管理担当者。
現在は「クロスモール」に商品のデータを入れることで連携先の外部サイトにも一括共有できる。
「外部サイトで数多くの商品を販売できるようになり、お客さまとのタッチポイントを増やせた。今年の2月には在庫消化率が90%を超えている」。
ついにEC化率が60%に
外部サイトとの在庫と商品データの連携を行うことで、ANAPの小ロット多品種の商品を各サイトでまんべんなく売ることが可能になった。
「各モールの売れ筋商品を再入荷したり、逆に売れてないものは他サイトに分配したりと、機会損失の減少に成功した。」と同氏は語る。これにより、同社のEC化率は60%へと上昇した。
また、データのシステム上での管理が可能になったことで人的な作業が減ったこともポイントだ。「手作業の部分が減り、売れ筋を追うなど発展的なことができるようになった。今後も人だからこそできることに注力していく」と意欲を見せる。
2018年~ EC&実店舗の顧客情報を一元化し次のステップ
クロスポイントの導入
ANAPが次に着手したのが、実店舗とECの顧客情報の連携だ。同社はアイルが提供するポイント・顧客情報一元管理サービス「クロスポイント」を6月から稼働。同時に会員制ポイントアプリ「ANAPポイント」をリリースした。アプリ会員数は約1カ月で2万人と順調だ。
「ECでの購入履歴と店舗での購入履歴を一括で管理できる。お客さま一人一人の特定が可能になった」と運営担当者は効果を実感している。
店舗との相乗効果でさらなる攻めへ
店舗では商品購入の際に画面のバーコードを読み込むとポイントが溜まる。ポイントは会員登録後、利用可能だ
「今後はメルマガやラインなどを活用したCRMの強化を行っていく」と運営責任者はEC事業の展望を語る。
一方で、その先に見据えているのは、店舗の強化だ。「現状、アプリ会員数の45%が店舗での促しによるもの。店舗にもまだまだ新規顧客獲得の可能性を感じる」と期待を見せる。
「店舗とECを別に捉えるのではなく、あくまで利益を最大化するにはどうしたら良いのかを考えてきた。重要なのはお客さまの利便性だ。新作やおすすめ商品などの最新の情報をお客さまが常に受け取ることができ、欲しいものを欲しい時に購入できる状態が理想的。ECでのCRM強化策でデータを集め、それを店舗にも応用して“リスクがなく、かつお客さまが満足できる状態"を作っていきたい。今回の『クロスポイント』導入で、それが可能になると感じている」。
ANAP 7年間のシステムの歩み
会社概要
※1
販売管理・在庫管理システムのアラジンオフィス
5000社以上のユーザー様に直接、販売から運用、保守までを一貫して行っているアイルの豊富な知識とノウハウから生まれた、販売管理・在庫管理システムをご提供しています。サポート力が評価されユーザーリピート率は98.0%。様々な業種・業態にも柔軟に対応可能な中堅・中小企業向け販売管理・在庫管理システムです。